会津プロジェクト

会津プロジェクト
会津プロジェクト

伝統の継承と展開

2015年度福島県地域づくり総合支援事業

椀ダ布ル展3 めぐみある風景 会津漆器・会津木綿

2016年10月8日(土)~11月6日(日)
10:00~18:00 火曜定休 入場無料

地場産業の文化と歴史を再認識し、新たな可能性を探求するため、東京造形大学と地元の職人や企業が協力し、地場産品魅力向上アートイベント企画委員会として2014年から活動を続けてまいりました。その成果として、重ね塗椀、木綿の洋服を展示いたします。長い年月をかけ、自然のめぐみとの語らいから生み出されてきた会津漆器・会津木綿の新たな試みをぜひご覧ください。

主催=アルテマイスター
協力=あいづまちなかアートプロジェクト実行委員会・地場産品魅力向上アートイベント企画委員会・東京造形大学

椀ダ布ル展
椀ダ布ル展

挨拶

いにしえ人は、天にかかるいわ(磐)のはしご(梯)のような山の姿に神を映し、磐梯山と名付けて安らかな日々を願いました。人びとを見守るその神は、山の麓に広がる荒れ地に野猪を使わし、猪たちが耕した苗代は、いつしか空を映す鏡のような猪苗代湖になったといわれています。 会津の人びとは山と湖が育む自然と語り合いながら、自然からのめぐみを敬愛の念とともに暮らしのなかに導きました。めぐみから暖かい布を織り、めぐみから魔を祓う知恵を得て、そこに生みだされたものが暮らしの糧と力になりました。 このように継承されてきた会津の地場の産業は、今もこれからも、自然のめぐみとの語り合いを続けていきます。 この展示では、会津木綿・会津塗りが描き出す「めぐみある風景」 のなかに、「伝統の未来」を感じていただければ幸いです。 本展示を開催するにあたり、「平成27年度福島県地域づくり総合支援事業」「アルテマイスター」「東京造形大学」をはじめ、多くの方々のご支援をいただきました。ご尽力いただきましたみなさまに、心よりお礼申し上げます。

地場産品魅力向上アートイベント企画委員会
東京造形大学副学長 沢 良子

椀ダ布ル展
椀ダ布ル展

会津漆器の歴史

会津では、佐原・葦名時代(鎌倉時代〜室町時代)にすでに漆の栽培が奨励されていたといわれます。同じ時期に、木地師が存在していたことも確認されています。本格的な漆器の生産は、16世紀後半に蒲生氏郷(1556-1595)が会津に入部する際、故郷の近江(滋賀県)から木地師7名、塗師4名を伴ったことによってその基礎が作られました。 会津漆器は、会津盆地を形成する山々から産出される良質な木材を巧みに形成する木地師、盆地特有の気候から産出される良質な漆を扱う塗師、そして会津塗を特徴付ける蒔絵師、それぞれの優れた分業によって育まれました。また、会津漆器が、椀、重箱、菓子鉢、盆など、美術工芸品ではなく生活用品を主として展開してきたことは、生活に結びついた地場産業であることを示す大きな特徴といって良いでしょう。 沢 良子 参考資料:『会津若松市史』民俗編2「諸職 職人の世界〜暮らしと手仕事」

木地師

かつての木地師はブナの原木を求めて山に入り、定住した場所の16キロ四方の木材を切り尽くすと、20年ほどで移動する生活をしていたといわれています。大正から昭和にかけて、陶器やプラスティック、アルミなどの素材が生活用品に普及し始めると、木地椀の需要が減少し、木地の生産を収入源としていた木地師は、徐々に減少していきました。現在、長い年月のなかで育まれた技術を受け継ぐ木地師たちが、会津漆器の伝統を支えています。

塗師

漆塗りは、下塗り、中塗り、上塗りの三段階がありますが、塗りの刷毛さばきは何十年という経験から繰り出される、勘と技術の賜物です。現在の下塗りはベンガラを使いますが、かつては豆柿の渋を塗る渋下地であったため、秋になると弟子から職人までが総出で柿つぶしをしたそうです。ほこりとゴミが禁物の塗師の仕事場は「ヌリマイ」と呼ばれ、漆器の完成には1年半ほどの歳月を要します。

蒔絵師

蒔絵とは、漆器にさまざまな絵や模様を描き、その上に金属粉や色粉を巻き付ける技法です。17世紀半ばの城下甲賀町には2人の蒔絵師がいたという記録があり、会津の蒔絵はこの頃に始まったと考えられます。繊細さを要求される蒔絵師の修行は、漆をきれいに取り除く筆洗いから始まります。会津特有の蒔絵は、一部下絵を描いて平蒔絵にして金粉をつけ、すき漆で止める技法で「消磨絵」というものです。

日常使いの重ね塗碗

会津漆器による椀の提案に取組み、この間、「会津漆器とは何か?」について考えてきました。 会津漆器は、長い歴史のなかでも生活用品を主として展開してきました。そのため、伝統産業でありながら、生産性や日常性に向けた商品開発が顕著に見られるようです。また、歴史が育んで来た分業制のなかで、量産化ができる生産体制と職人気質に裏付けられた技術力の高さ、そして新たなもの作りへの挑戦も感じることができました。会津絵といわれる会津の蒔絵に、絢爛豪華さではなく日常的な華やかさが感じられるのは、まさに会津漆器の大きな特徴といえるでしょう。この日常性と華やかさの特徴を、日常使いの椀として提案することで、食への意識を表現できないかと考えました。参考にしたのは、禅宗の修行僧が使用する入れ子状に重ねられた応量器です。現在の飽食の時代に、あえて一汁一菜を盛りつける器として、三つ重ねられた器に蓋をかぶせる塗椀を3種類デザインしました。 蒔絵は、年代の違う3名の方々に、個々の特徴を生かした新しい会津絵の提案をしていただきました。会津塗の職人の技を心ゆくまでご堪能ください。 今回の取り組みにあたり会津大学短期大学部の井波純先生には多大なる協力を頂きました。ありがとうございます。

東京造形大学教授・プロダクトデザイナー
森田 敏昭

椀ダ布ル展
椀ダ布ル展

会津木綿の歴史

会津の綿花栽培は、蒲生氏郷(1556-1595)が1590年に陸奥会津に入部した後、一連の産業振興策を展開したことから始まったといわれます。その後、
● 17世紀前半:伊予松山(愛媛県)から織師が招かれ、「伊予縞(いよじま)」の技術をもとに会津木綿が始まる。
● 保科正之(1611-1673)が綿花栽培を奨励し、綿花栽培北限の会津の地でほとんどの農家が明治初め頃まで綿花を栽培する。
以上の歴史をもとに、地場産業として大きな役割を果たしていました。農閑期の夜、農家の「ばあちゃん」が綿の核と繊維とを分ける「綿切り」をします。分けられた繊維は綿屋に「綿ぶち」に出され、すいてほぐされフワフワになった綿を、主婦が収入源として糸に紡ぎます。その糸を、おもに武家の女性が内職として織物にするというように、女性の力に支えられた地産地消の地場産業が会津木綿の基礎といって良いでしょう。 会津木綿のあり方が様変わりしたのは、明治政府が殖産興業を国家政策としたことによります。紡績産業を発達させるために、明治10年代くらいからは外国綿花が大量に輸入されるようになりました。和綿栽培が洋綿に押されたことによって、農家による綿花栽培は急速に衰え、大正時代にはその姿を消したといわれています。製糸と機織りはそれぞれ独立した産業になり、綿糸は製糸工場から購入されるようになりました。織機も、昭和初期には豊田式自動織機が導入されました。戦争中には金属の供出によって織機が没収され操業が中断されたこともありましたが、現在でも「豊田式織機株式会社」と印された自動織機が、織りの音を元気に工場に響かせています。大正末には会津地方だけで30を超える織物工場がありましたが、現在は2社だけが会津木綿を継承しています。
沢 良子 参考資料:『会津若松市史』民俗編2「諸職 職人の世界〜暮らしと手仕事」

伝統を経糸(たていと)に、未来を緯糸(よこいと)に、創造を文様に

会津木綿のシャープなストライプは、1000本の経糸を緻密に織り上げてつくります。2012年春、会津を訪ねた東京造形大学大学院の学生達は、会津の織元で今も生産されている、数百点に及ぶストライプのリズミカルなデザインに魅了され、縞模様の調査研究をスタートさせました。2014年には、ハレの日のための縞布を、先人達の作品を「見よう見まね」でつくりました。仕上がった会津木綿は、緯糸に強い撚りをかけ、「会津ちぢみ」と名付けました。そして3年目の2015年、「一発勝負」でごまかしがきかない「染め」に挑戦しました。サラサラな「会津ちぢみ」に大胆なストライプ、軽快なポルカドットが加わり、「会津Fab」が誕生しました。色目の渋さ、柔らかさ、ストライプと粋、モダン、ポップ・・・と。独特の趣のある「会津木綿」が生まれました。

東京造形大学教授・テキスタイルデザイナー
須藤 玲子

椀ダ布ル展
椀ダ布ル展

展示会クレジット

協力:地場産品魅力向上アートイベント企画委員会
【福島県地域づくり総合支援事業】
委員長 馬場由紀子〈郷土料理田季野取締役〉 赤松由美子〈地域文化コーディネーター〉  飯盛正徳〈飯盛山山主〉 井波純〈会津大学短期大学部教授〉 岩橋由美子〈アルテマイスター〉 沢良子〈東京造形大学教授〉  新城猪之吉〈末廣酒造代表取締役社長〉 成田介〈成田合名会社社長〉 森田敏昭〈東京造形大学教授〉

東京造形大学
長谷川弓子〈料理研究家〉 後藤大樹〈テキスタイルデザイナー〉
写真:林雅之/越田悟全
参加者:大橋博〈彫刻〉 清家弘幸〈衣装〉 山田木綿織元〈木綿〉 森田商店〈撚糸〉 東福産業〈捺染〉 森田敏昭〈椀デザイン監修〉 三浦圭一/荒井勝祐/小椋大祐〈木地〉 冨樫孝男/吉田徹〈漆〉 山内泰次/照井克弘/二瓶由布子〈蒔絵〉

【東京造形大学大学院会津プロジェクト担当教員】
沢良子 須藤玲子 森田敏昭 清家弘幸 福田秀之 長井健太郎 保井智貴

【東京造形大学大学院・会津プロジェクト大学院生】
赤塚祐介 牛田利沙 王雨虹 王モク カンチンテイ 邸ユアンジュン 強斐  小泉翔吾 柴垣瑛才 張中遠 方ユエン 山川さとみ 山本遙 劉イチリョウ 劉艶 石原優至 伊藤蓮美 何談 許イブン  熊谷彩乃 顧真願 坂本亜子 櫻田伸基 佐藤文哉 セツ史平 孫蒙新 載勇強 梢含凝 張欲 永井豪 山本郁子 梁瞰 リュウ芸 【東京造形大学・テキスタイル選考領域有志学生】
石井藍 鵜飼甘菜 上村みなみ 細谷佳永 松尾美沙 西川柚希 小野栞  片岡美央 北林美咲 木村樹理亜 工藤麻衣 小暮潤司 近藤知里 坂口佳 島村悠理 鈴木一世 高田朋佳 高田みひろ  竹井美咲子 西紗那子 橋本萌子 船越麻衣 松下美千佳 南里佳 茂木愛友実 八代真穂 宮島希望 平塚千寛 宮越里紗 野口瑞希

椀ダ布ル展
椀ダ布ル展